年頭の御挨拶を申し上げます。    本年も宜しくお願いします。

                         2012年 1月1日   斉藤 孝
 

    2日の休肝日
 「葡萄の美酒、夜行の杯、飲まんと欲すれば、琵琶馬上に催す。酔うて砂上に臥すとも君笑うことなかれ。」[涼州詞] 

私の1年は、この漢詩そのものでした。その報いで、週2日の休肝日に苦しみました。ただいつまで持つのやら不安ですが。冬になると雪が恋しくなり、大雪の北国の山道を好んでドライブしました。雪道は危険ですが、白銀と雪煙りを走ることは実に爽快です。また熱燗が恋しくなりました。2日の休肝日を守ることは苦しいことです。

   被災地ボランティア
 石巻牡鹿半島漁村では、津波で泥と瓦礫に埋もれた廃家から御位牌を探しました。「位牌がなければ、お盆に御先祖様が帰ってこれない。」日本人の絆を実感しました。そして悲惨な現場と幼い頃の記憶と重なりました。

1942年に中国青島で生まれて、敗戦後の焼土と化した日本に引き揚げてきたことです。小さな私の手は母親にしっかりと握られて、破れたリックサックを背に担いで歩いていました。辿りついた母の実家の富山市はB29の空襲で全市まる焼けでした。焼け焦げた黒いトタン板を覚えています。何も無くなった戦後の日本。悔しかった。情けなかった。しかし挫けてはならない。頑張ってきました。悲惨な被災地の姿を見るたびに思い出します。

   
山登りと90歳になる母親
 「過ぎし日の旅、山の想い、森に彷徨い、谷を行き、峰に立つ日を忘れえず。」

これは愛する昔の山の歌です。山奥の露天風呂も楽しみですが、最近はお猿さんも楽しんでいます。山登りは、浅間黒斑山、前穂高、岩菅、根子岳、車山など低い山に10数回行きました。いつも登山で重いリックサックを背負う時、あの引き揚げの破れた小さなリックサックを思い出し、奮い立ちます。苦しくなると独り言をつぶやきます。「汗水を流そう。頑張ろう。粘ろう。必ずや山頂に行ける。東北の苦難と苦労を思えば、日本は必ず復興する。」70歳になり体力は衰えていますが、気持ちは若年です。戦後の荒廃と飢餓を耐えましたから。健康な体を与えてくれた90歳になる母親(トミ)に感謝しています。

   
海外旅行で歴史を懐かしむ
 エフェソスの古代図書館跡とペルガマの遺跡を訪れるためにアナトリア(トルコ)に行きました。ペルガマは羊皮紙(parchment)の名前となりました。

古代ローマのプリニゥスの格言、「文明も人間の歴史も、パピルス(パーチメント)の上に存在する。」 をつぶやきました。

7月にはマルチメディア・メタデータ研究のために豪州のクイーンズランド大学に行きました。9月には英国のシェフィールド大学に行きました。コッツウォルズの小さな村々は素晴らしい緑と花々で一杯でした。憬れのイングリッシュ・ガーデンとハンギング・バスケットは私の庭作りに刺激を与えてくれました。

海外の人々から「日本の復興と幸福を祈ります」という優しい言葉をもらいました。日本は、どこでも愛されていると感じて嬉しくなりました。レストランの隣に座ったサウジアラビア人は、「日本はモスレムの教えにある律義な精神と人間の絆を実証している。」と尊敬していました。
 

人は概念の世界に住んでいる
 著作は、概念理論に関する愚作を執筆しました。人は世界を理解しようとする時、あらかじめ大まかな略図を持っています。それこそが世界を理解する概念の枠組みであるスキーマとなるものではないのか。その昔、書籍という小さなスキーマを学びとることをリテラシーといいました。確かなことは、その原語のリテラ(Litera)が表しています。それは文字で表された主題は抽象化された概念であり、いかにして実世界の具体像に対応付けて描くかという文字の解読能力のことでした。

 

中央大学を来春退職します。私の研究人生は、1967年から始まりました。それは、先端を行く電子計算機による自動索引システムの試作でした。課題となったことは情報インデックスが表す意味の多義性の解決法であり、そこに潜む概念理論の必要性でした。

それから私は、厭きもせず40数年も同じ概念理論の研究を続けて来たことになります。概念理論は古典として始末されるものではなく、先端を行くICTの研究課題であると信じています。ICTの到達点の中には人工知能の実現が描かれますが、そのためには概念理論の深化を極めるもことも肝要です。このような研究に関心を持つ人が1人でも多く出てくれるならば、望外の喜びです。


 
自然とスポーツで癒される 

日本の素晴らしい里山から恩恵を受て感謝していますが、一方では地震や津波、台風などにみる自然に対する畏怖の念も抱いています。薔薇の花園から可憐な山野草まで、農作業を含めて自然を楽しみました。軽井沢では巣箱を10個も作り、野鳥の団地になりました。餌台も4箇所を設けて野鳥を呼び込んでいます。あまりの多さに孫の悠真は呆れ顔です。

かれこれ5年にもなるアルスロンガ農園の葡萄。今年こそはと極上のワインを期待しますが、どうもドン・キホーテの「見果てぬ夢」になりそうです。古き友と 農業に汗を流し爆笑と暴飲の日々を送りました。 この葡萄はワインだけのものではなく、仲間の楽しみを倍増させるシンボルです。ボッティチェリの名画「プリマベーラ」に描かれた愛のアプロディテ。天女の 真っ白な素足で踏まれた葡萄から搾り出るワインを夢見ます。

ワインの朗報が1月7日に来ました。「見果てぬ夢」が一転して「ドリカムDreamComeTrue」です。某勝沼ワイナリーにて瓶詰めが完成しました。随喜の落涙です。バッカスの宴になります。嬉しい。週2日の休肝日を短縮予定です。

 

飲んでばかりではロシア人のようにアル中になります。片瀬山テニスのお仲間と健康な汗を流しました。富士山を見ながらのテニスは最高。天井破りの「目つぶしロブ」で得点を稼ぎました。メンバーには傷痍軍人も多くなり、忘れ物が多くなりました。ペットボトル、水筒、ラケットケースなど。ラケットを脇に挟んで「ラケットが見つからない」という初期痴呆症状も多々ありました。

70歳になりましたが、あふれる好奇心と青年の心を手放さずに時間を大切していきたいと思います。ありがたい人生です。やりたいことはまだまだ沢山あります。
みなさま、我がままなこの私を今年も宜しくお願い申し上げます。
 

              みなさまの御健康と御活躍を希望いたします。  

   個人ホームページ   http://www.rr.em-net.ne.jp/~saitotac/



 

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