年末と年頭の御挨拶を申し上げます。 2003年 1月1日
ご無沙汰しております。私は現在、在外研究のため米国カリフォルニア大学に滞在しておりま す。
留守中は、みなさまからのご連絡に対するご返事の遅れ、
会合の無断欠席などご無礼の数々 が あり、何かとご迷 惑 をおかけしております。
私は、なにもかもが明るく、大きなカリフォルニアの澄み切った青空の下、
広大な自然に囲まれたキャンパスの中で、世界中から集まった人々と
研究生活を楽しんでおります。
Hi Takashi ! How are you doing ? Tac
昨日会ったばかりの若き女性から呼ばれると自分の歳も忘れ、気持ちが若くなります。
実に友好的で素朴。そしてオープンで自由平等のお国柄ですから、地位、年齢、仕事、性別、人種など気にしません。
悩める大国には違いありませんが、この国は何事も「未来志向」です。
そこで還暦の私も過去を清算して、「第三の青春」をプランしました。
5月には、長女啓子と夫君の大介が来てくれ、一家でサクラメント生活を経験できました。
7月には大学の恩師、藤川正信先生を訪ねるために、その隠遁先であるカナダ・バンクーバ郊外の半島まで
ドライブしたことも想い出になりました。
その間に友人夫妻や大学の卒業生が慰問に来てくれたのも嬉しいことでした。
9月には80歳になりました私の母親が心臓のペースメーカを埋め込むという手術の後でしたが、
実に幸福なことにカリフォルニアまで会いに来てくれました。
10月には、ワイフの栄子は念願の母校インディアナ大学の同窓会に出席でき、
懐かしい寄宿舎の前で喜んでいました。
栄子と次女の洋子の二人は、毎月のように太平洋を往復していて、
マイレージもこの一年でかなり貯まったみたいです。
私はドライブに熱中しています。毎晩のように広大なアメリカ大陸の地図を見ながら、
次に行くべき場所をシミュレーションしています。
実際にその地方に行き、自分の地図読みどおりにドライブできる喜び、その目的の達成感に陶酔しています。
困ったもので、まさに還暦暴走族の姿です。
ところで、情報や知識の地図を描くことが「記録情報学」かもしれません。
研究課題である「記録情報学の構築」、そして知識獲得モデルの研究は、
期待した以上に成果を得ることができました。
これは、バークレイ校のバックランド教授とデービス校のウォルターズ教授を始めとする
多くの研究者からの知的刺激とご指導、そして膨大な参考文献を得ることができる
図書館と高速なインターネット環境の支援によるものです。
このお二人の推薦によって私はカリフォルニア大学客員教授として過ごせるわけです。
深く感謝しています。
全米の大学を訪問するたびに、その研究アプローチの斬新さ、多彩な人々には驚かされます。
そんな米国の大学において、若き研究者の姿を眺めていると、羨ましくなります。
もはや歳は戻りませんが、私の研究課題を探索する旅は、かなり遠回りしてきたわけですが、
それでもやっと「原点回帰」という地図によって目的地を見つけることができました。
では、みなさま、よいお年をお迎えください。
2002年12月20日 サクラメントにて 斉藤 孝