ホーム | 独り言 | 論評 | 小話 | 旅行 | 御挨拶 | ガーデニング | ブログ | English | YouTube
YouTube <----- 現在のページ 戻る -----> タイトル一覧
カメの庭 「あれから60年 彼女の顔は物語」 2021年11月
江の島沖の相模湾に赤い夕日が沈む。
その先は伊豆半島の天城山の後ろになる。
山並みが真っ赤に燃えているようだ。
サーファーが波間に群がっていた。まるでミズスマシのような姿をして大波を待っている。
鵠沼海岸に秋がやってきた。
老夫婦が波際を歩いていた。しばしば砂に足を取られよろよろとつまずいた。
互いに手を差し伸べ硬く握りしめていた。二人の会話が微かに聞こえた。
"しっかりしなさい。もたもたしないこと。ダメなひとね。"
80歳近くの老夫婦はお互いに顔を見合わせた。
あの時は、柔らかな白い手を握り締めてくれたのに・・。
さざ波が幾重にも二人の足元を濡らした。
"冷たくないかい。スカートが波で濡れてしまうよ。素足だから大丈夫なの。"
あれから60年。
こんなにも会話は変わるものなのか。
お顔はまるで妖女百面相のように変わってきた。
彼女の顔は物語になると思った。
ホーム | 独り言 | 論評 | 小話 | 旅行 | 御挨拶 | ガーデニング | ブログ | English | YouTube
YouTube <----- 現在のページ 戻る -----> タイトル一覧