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カメの旅          オホーツク海の流氷        2022年2月1日

2月初め厳冬期の知床。
 老夫婦は、流氷の見物と北の魚貝料理を求めて知床にやって来た。
流氷によってオホーツク海は真っ白な陸地のように変貌していた。

         知床の岬に はまなすの咲くころ
            思い出しておくれ 俺たちの事を
               飲んで騒いで 丘にのぼれば
                  はるかクナシリに 白夜は明ける


知床の大自然の情景が目の前に広がるような『知床旅情』の歌詞。
有名な森繁節である。その昔に仲間とよく合唱した大好きな曲である。
森繫久彌が演じた映画『地の涯に生きるもの』は、知床半島の番屋で孤独に生きる老人の物語だった。

流氷の白い海原
 どこから海が始まるのかサッパリ分からない。オホーツク海は流氷で真っ白な海原になっている。砂浜を過ぎると波打ち際から流氷の塊がびっしりと詰まっている。遥か水平線、空と海が出会う場所まで流氷の海原が続く。まるで白い北極圏の氷山を砕いて平らに並べたみたい。樺太(サハリン)まで流氷の上を歩いて行けそうだ。

『ガリンコ号』
 紋別港から砕氷観光船『ガリンコ号』に乗船してオホーツク海に出た。
ガリンコ号は先頭に付いているドリルのような砕氷器で流氷を砕いて前進する。面白い仕組みである。砕氷艦は、南極観測船『宗谷』のように分厚い鋼鉄で船体が造られ、先頭が鋭い刃物のようなっている。『ガリンコ号』は、ミシシッピ川の大きな水車を回して進行するショーボートのような砕氷観光船なのだ。

オホーツク文化
 昔のツングース系先住民は、もしかしてシベリア大陸から流氷群をつたわり蝦夷地にたどり着き、先住民のアイヌ民族と出会った。そして独特のオホーツク文化を作り上げたのだろう。知床博物館の展示物から想像してみた。白銀に輝く海原を見つめながら、北方文化の交流は、流氷がもたらしたに違いない。

「はるかクナシリに 白夜は明ける」
 羅臼から真っ白な国後島の山々を遠望できた。ロシアによって不法占領されているクナシリとエトロフなど北方4島。対岸から海を挟んで毎日見ている島民にとり、さぞかし悔しいことだろう。オジロワシは国境の海原に舞っていた。羅臼港では知床ネイチャークルーズ船に乗船した。越冬中のオオワシとオジロワシを観察するためである。オジロワシは、羅臼沖にいる魚類を求めてやってくる。スケソウダラ漁船に集まって悠然と飛んでいた。

センチメンタルジャーニー
 知床の大自然は真っ白に光輝いていた。半島付け根の斜里岳から海別岳、遠音別岳そして羅臼岳までも遠望できた。遠い昔、60年前の夏。山友達と二人で知床峠と羅臼岳をさまよったことがあった。
毎晩、小さなテントの中でヒグマを怖がりながら、アブに刺されながら過ごした山旅だった。あの時、麓で出会った出版社の記者とカメラマンの手助けをして、大きな荷物を背負い上げた。たしか「主婦の友」という雑誌社の二人だった。編集者が学友の姉上であることを知って大喜びした。


知床は「知の寝床」
 知床の語源は知らないが、「知の寝床」と考えた。この「知」とは、流氷から生まれた大自然の連鎖システムといえる。
流氷は、オホーツク海で形成される。この海原は、地図をよく見ると巨大な湾の中にある。西はシベリア大陸、北にカムチャッカ半島、その下に樺太(サハリン)、東は千島列島がつらなりオホーツク海を取り囲むようになっている。シベリア沿海州の大河、アムール川(黒竜江)の淡水が流れ込む。オホーツク海は、アムール川の淡水で薄められて塩分濃度は低くなる。それによって表層が寒気で凍って流氷が生まれる。

流氷の「知」すなわち「大自然の連鎖システム」は、ここから始まる。


流氷は、2月から樺太海流に乗って南下し、低温で塩分が濃い層が豊かな栄養を知床周辺海域へと広げる。流氷の中にはリンや窒素を養分とする植物プランクトン(珪藻類)が成長する。

春になって流氷が解け始めると、大繁殖する。これをえさとする動物プランクトンが大発生して魚の餌となる。その魚群を求めてアザラシ、トド、シャチなどの海獣が集まる。
海で育ったサケやマスは産卵のために知床の川に上り、そこでヒグマなどのえさになる。

流氷は風や潮の流れで激しく揺れて沿岸の海藻を削り取り、浅瀬の岩場にコンブの森が形成される。
これらを餌にするヒグマやエゾシカなどの大型動物が非常に多く生息する。
動植物の多様性や希少動物の生息も知床の特徴である。

 
知床は、「大自然の連鎖システム」という「知」の寝床(揺り籠)なのだ。
 


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