この研究プロジェクトについて御紹介します。 スロヴァキアというアイデンティティが形成されたのは19世紀になってからです。しかも主権国家として完全に独立を得たのは1993年でした。ただし、第二次大戦中にナチスドイツの傀儡政権としてのスロヴァキア共和国は一時期存在しました。スロヴァキアの地には中世の時代に鉱山開発に伴いドイツ人が入植し、カルパチア山脈を通じてルーマニア人やロマ人、そしてユダヤ人もそれぞれ独自の文化を担いながら移り住んできました。その間の長い期間に渡りハンガリー王国に支配されていました。パプリカやグヤーシ料理、そして日常生活にはハンガリーの影響が見られます。 スロヴァキアの魅力は、エスニックグループが仲良く暮らしていることです。最大のグループは、ハンガリー人、ウクライナ人、ドイツ人、ポーランド人、チェコ人、クロアチア人、ロマ人、そしてユダヤ人などです。それぞれ様々な民俗的文化を誇っています。興味あることは、カトリック、プロテスタント、フス教徒、ユダヤ教徒、ギリシャ・カトリックなどの宗教が混在し、仲良く共存していることです。東部の小さな村に行っても、そこにはカトリック教会があり、ルシン人のためにはギリシャ・カトリックの教会があることです。東方教会であろうが、フス教徒のプロテスタントであってもそこには宗教紛争はありません。ユダヤ教のシナゴーグもありました。ロマ人部落には彼らのためのカトリック教会もあります。バルカン半島のような宗教と民族の紛争は存在しないようです。歴史的にスロヴァキア人とその国土は、外国人に長らく支配されても素朴に、柔軟に様々な文化と宗教、そして人々を受け入れてきたのです。 さて、スロヴァキアの4つの地域を事例研究の対象として取り上げます。 4つの地域とは、 中欧の体制変革と社会変動を地域社会に下ろして実証的に踏査します。しかもその変動を、対象地域を特定して時系列的に追及します。体制の転換に伴う社会変動と生活変動を地域レベルで調査します。 この研究の歴史は、1990年代初頭にスロヴァキア科学アカデミー社会学研究所スタッフとの協力関係から始まりました。すでにその成果は、中部スロヴァキア2都市を事例研究対象としたものを中央大学社会科学研究所から1991−93年、1996−98年に資料集として出版しました。報告書の形では、スロヴァキア科学アカデミーからスロヴァキア語で刊行されました。 ロマ人 ロマ人と呼ぶとローマ人、つまり古代ローマ帝国の人々やラテン系の人々を想像します。スロヴァキアではロマ人とはジプシーの人々のことです。スペインのアンダルシアにおけるフラメンコで有名なジプシー、ジタンと呼ばれるフランスのジプシー。有名なのはイギリス生まれのチャップリンがジプシーだったそうです。彼は自分自身をユダヤ系と考えていたようです。映画俳優では「王様と私」の名演技で有名なユールブリンナーはジプシーでした。私はスロヴァキアで初めて知ったのですが、ハリウッドのセクシー女優エヴァ・ガードナー
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Last Updated on 08/20/2006 Created by Takashi SAITO |